「原子力神話からの解放」

この本は2000年に発行されており、私もその後に買って読んでいたものです。
本箱から引き出してもう一度読んでみました。
原子力神話からの解放
筆者は東大理学部化学科卒の原子核化学の理学博士で、まさに原子力産業の初期のころからその場に身を置いていた方。決して門外漢の素人が原発怖いと思っているような本ではありません。原子力発電における問題点に警鐘を鳴らしていたことが今になって非常に重大なことであったと思わざるを得ません。
この本を書かれたときは1999年JCOの臨界事故の後で、2000年に先生はお亡くなりになりました。
もし今、生きておられたら、どう思われるだろうか?あれほど言ったのに…と思われてるに違いありません。
追記 最近この本が復刊となりました。
原子力神話からの解放 -日本を滅ぼす九つの呪縛 (講談社プラスアルファ文庫)原子力神話からの解放 -日本を滅ぼす九つの呪縛 (講談社プラスアルファ文庫)
(2011/05/20)
高木 仁三郎

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九つの神話

「原子力は無限のエネルギー」という神話
1950年代後半から、当初は原子力というエネルギーに対する期待というのはすごいもので、必ずしも発電だけでなく、船や飛行機、製鉄、アイソトープ、放射線照射による様々な製品の研究などをしていたそうです。しかしやってみると、放射能の扱いがやっかいで、安全性から考えると結局、原子力発電しか使えないということになっていったそうです。
さらに、ウランの埋蔵量を知ってみると、案外少ないとわかって、がっくりしたそうです。そして高速増殖炉というものが考え出されましたが、それも今や中止されているもので、その神話もなくなっています。

湯川秀樹さんが1956年に原子力委員会が日本で初めてできた時、委員になられたそうです。原子爆弾の怖さを知りつつ、人間はこれを発電に使うだろうと予測されていたものの、しかし、原子力に対して最初からかなり違和感を持っていて、政治主導的に原子力を導入する過程に関しては非常に批判的だったということで、ほどなく委員会を辞められたのです。

「原子力は石油危機を克服する」という神話
73年にあったオイルショックは政治的に作られ、石油依存から原子力へと向かわせるきっかけを作ったようでした。そういえば、あのころ、あと30年で石油は枯渇するとか言われていましたね。実際は今も枯渇していませんが!実はこれは当時の政府が作った有力な標語だったんですね。
年2基づつ作っていくという三菱、東芝、日立の仕事を作るための計画だったとも言えるようです。
高木先生はあのオイルショックの時から他のエネルギー開発に力を入れていれば…いまごろ、こんなに原発が作られることもなく、燃料電池、風力、太陽、天然ガスなどのエネルギー転換を計っていたのではと言っています。

「原子力の平和利用」という神話
原子力発電の原子炉級プルトニウムは原子爆弾にならないということを盛んに日本では言われていました。しかしこれは世界的に見れば大変恥ずかしい話で、非科学的だそうです。

「原子力は安全」という神話
1975年にアメリカの「ラスムッセン報告」で、「ヤンキースタジアムに隕石が落ちる確率よりも低い」と言われ、それが一般化され、安全の保証となったようです。
しかし、79年にスリーマイル島の原発事故が起こり、それを疑問に思うようになりました。何百万年に一回でなくて、何万、何千年に一回の確率でないか、といわれるようになりました。原発の1基あたりの確率なので、世界のすべてで換算し、50年代、60年代、86年にはチェルノブイリ、すると、10年に一回くらいで起きているようなのです。しかし、それまでは日本の中では、”日本の技術は優秀だから”という気持ちで安全を神話化してきたと言えます。95年に阪神淡路大震災が起き、12月に「もんじゅ」の事故、97年東海村の再処理工場で事故が起こって、あやしくなってきました。

工学的設計の問題で、原子炉は多重防護システムをしているけれど、本当にそれで安全なのか?と疑問を呈しています。
つまり、お城をイメージするとわかりやすいのですが、何重にもガードして兵士もいても、部屋の中で火事になったら、意味がないことです。圧力容器が老朽化して破損をすることや。人間の気の緩みやミスがあれば、いくら多重の防護壁があってもなんの意味もないことになると、指摘しています。

「原子力は安い電力を提供する」という神話
これは無限のエネルギーという神話と対になっていて、この神話は電力会社にとっては必要不可欠な言葉だったようです。現実にはそうはいかなかったのです。アメリカでスリーマイル島から原発の建設が止まってしまったのはその経済性のせいとも言えました。ところが日本では、通産省がかなり無理な論法で原子力が安いと主張。石炭石油よりも2円/kwほど安いと試算。意図的にコストを組み込まずに、無理に耐用年数を16年から40年に延ばしたことで安くしたのでした。

「原発は地域振興に役立つ」という神話
電源三法が作られ、主に大きいのが、固定資産税などが地域にお金を落とすのですが、各種の交付金は、迷惑料のようなもの。労働力が必要になるので、人が増えるという点があると思われました。が、交付金も建ってしまうと終わり、各市長の話からも結果として地域振興にはほとんど役に立ちませんでした。ただ一度受け入れてしまうと麻薬効果と言われるように、切れるとまた入れなければ、街がなりたたなくなるという状態に陥っているらしいのです。

「原子力はクリーンなエネルギー」という神話
これは最後に残った神話です。80年代からの地球温暖化の切り札として日本では国策としてやりました。でも、良く見てみると、各産業別に見ると、発電所から出るCO2は全排出量のたった6.8%(1997年)でした。
ですから、原発を1基2基増やすよりも自動車に乗る回数を3回から1回へ減らすほうが効果が出るようです。
CO2は出さなくても放射能を出すならば、はたしてこれがクリーンなのかと疑問を感じるのです。

「核燃料はリサイクルできる」という神話
核燃料リサイクルのことをプルサーマルと言います。使用済み核燃料を化学処理して、プルトニウムを取り出し、ウランと混ぜてMOXという核燃料を作ります。2000年当時、色々なMOXの不手際があって、すっかりプルサーマル計画は凍結されていたそうです。リサイクルといっても、元の燃料の1%くらいのものを使っていただけで、本当はこんなものはリサイクルとはいえないと言っています。MOX燃料は高木さんの専門だったのでよくご存知の話、いろいろな過程を経て、1%のリサイクルをするにあたって、ゴミを増やす結果となり、さらに悪いのは工程中で放射能をより出してしまうということでした。結論としてはMOX燃料にはメリットはないということでした。

「日本の原子力技術は優秀」という神話
日本は自動車や新幹線など確かに技術は優秀だったかもしれませんが、原子力の技術はアメリカからの直輸入であり、独自の開発をした原子力船の「むつ」は中性子線漏れ事故などで失敗、廃船となりました。動燃の歴史は破綻の歴史ともいえます。日本の原子力技術はしっかりしていなかったのです。



福島第一原発の1号炉は40年も経過しており、それを60年にまで延長しようとしていた矢先の東日本大震災。
恐れていたことが実際に起こっています。この高木任三郎氏の危惧がまったく無視されたまま、2011年の今を迎えたのです。原子力産業は昔から秘密主義だったとも書かれています。データ隠蔽、捏造。もんじゅやJCO事故もありましたから、その時に少しは体質改善され、原発見直し論でも盛り上がれば良かったのですが。国策になっていいことだけを国民に教え、悪いことは隠して盛り上げたということはわかったのですが、何故これが国策になってしまったのか?が問題でもあります。

原発はトイレのないマンションと言われ、その廃棄物、ゴミをどうするか、日本での余剰プルトニウムの量は原爆4000発分を抱え込むことになるそうです。(2000年では30トンのプルトニウム)
私たちはパンドラの箱を開けてしまいました。プルトニウムというものをまた箱に入れて閉じ込めておくことができるか、という問題に晒されています。

これからの日本はどんなにお金をかけてでも、これらの原子炉を廃炉にしていく方向しかありません。何十年もずっとずっと管理していかなければなりません。この先は民間会社のコスト意識では絶対にできない仕事になるのでしょう。儲けるか儲けないかではなくて、国や国民を守り抜くという国レベルの責任意識でしか成り立たないと思います。
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2008年9月リーマンショックの金融危機から日本の政治経済に目覚めた普通の主婦です。今までB層とバカにされていたと気がつきました。

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