「悪夢のサイクル」その2

悪夢のサイクル―ネオリベラリズム循環悪夢のサイクル―ネオリベラリズム循環
(2006/10)
内橋 克人

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この本で中で市場原理主義がいかにして生まれてしまったかが詳しく書いてある。

アメリカの経済学者ミルトン・フリードマンは1912年生まれのユダヤ人。両親がスターリン治下やナチス・ヒットラー治下の迫害を受けてアメリカに渡ってきた。そんな生い立ちからか、国家も制度も民族も一切、力を持たない社会システムこそ幸福だという考えのもと、新自由主義、市場原理主義の経済学派を生み出した。

アメリカの60年代までの自由主義はケインズ派の、政府が介入することで市場の振幅をコントロールしていこうとする考えが主流だった。

しかし70年代に入ってフリードマンの考え方、”市場にまかせればすべてうまくいく”が受け入れられるようになった。累進課税は強権を用いてある人から金を取上げることで正当ではない、という理論が大流行した。76年にはノーベル経済学賞を受賞、テレビ番組でアピール、本もベストセラー、当時のアメリカ人には自由と言う言葉が受けた。

アメリカは実は1920年代にも同じような自由主義政策がとられ、株が流行り、バブル景気になったが、29年に大恐慌が起きたという経験がある。それで、市場の失敗を反省し、ケインズの唱えた市場に政府が介入する政策に転換したのだった。ルーズベルトのニューデール政策などがそれである。ガルブレイスはそれを安定化装置を取り入れたと言った。
ところがベトナム戦争で失敗し、戦費負担からインフレ、失業が増えた。これは政府の失敗だったのだが、行き詰ったところでフリードマンが登場したのだった。

公共事業は止める、福祉事業は止める、インフレ退治に貨幣を減らす、ということをした。これはマネタリズムという。87年~06年のFRB議長グリーンスパンはこのマネタリスト実験を行った。フリードマン派のシカゴ派は色々なところに送り込まれて広がった。
極端な自由主義で、○保険制度は反対。○医薬品、食品の安全規制は進歩を妨げるので反対。○最低賃金法はなし。○公民権運動からの自由。(公民権運動…黒人、マイノリティーなどの尊重)大学の黒人枠をなくした。○公衆衛生もいらない。○電力自由化、民営化。

ただ教育だけは違っていて、授業料クーポン制を提案した。これは国の力によって機会を平等にした上で、努力するかしないかは本人の意志にまかせ、努力しない人間は貧困のままであきらめるしかない、というものだ。

実需がなければ為替を投機の対象にしないという実需原則があったが、84年アメリカは日本の実需原則を廃止させた。マレーシアのマハティール元大統領も97年に「実需を伴わない為替取引は禁止すべきである」と訴えたが、日本をはじめとするアジア諸国も反対してしまった。

フリードマンと1965年にシカゴ大学で一緒だった宇沢東大名誉教授がエピソードを語っている。フリードマンは銀行に一万ポンド空売りしたいと申し出ると、当時の銀行は投機は反社会的とする銀行法に則り、断った。すると、彼は激怒した。
「資本主義の世界では儲かる時に儲けるのが、ジェントルマンなんだ!」と言ったそうだ。

……
ここからは私見です。フリードマンの自分の祖国もないという思いは、もともと祖国がある人間にとっては理解できないほどの疎外感があったのかもしれない。「市場にまかせればすべてうまくいく」といったシンプルな発想は魅力的だ。アメリカンドリームをだれでも実現できそうな感覚さえ抱くのだから。スタートラインは皆同じ、努力次第だと。
すっかり日本もこんな考えの人が多くなっているような気がする。年長の職場の同僚に対して、仕事ができないのに給料は自分より高い、と悪口をいい、いじめ、退職まで追い込んだ30代OL達を思い出す。年功序列はもはや無いのだ。ホームレスの人を見ても努力が足りなかったんだと思ったりする。なんでもかんでも自己責任だと。
こんな世の中だから、自分も、とにかくなんとか食べていけて、最低限の生活ができれば幸せだ、と半ば諦めの気持で暮らしていたのだが。
フリードマンが市場主義にこのような欠陥があること、万人の幸せでなないこと、この悪夢のサイクルを知っていてあえて進めたのか?、それは定かではないが、努力しないで怠けて甘い汁を吸おうとするやつらなんてほうっておけ、諦めろ、自業自得だとそういう人々を足蹴にしたことは確かである。実は一度転落した人は這い上がれないことを知っていて??…冷酷無慈悲な人間である。

小泉竹中改革の時、彼らの話はソフトな言い方であってもよく聞けば恐ろしい話ばかりだった。目が覚めた。
思えば、「規制」というのは長い時間をかけて営々として築いてきた知恵の固まりだったのではないか。それを撤廃、破壊するとは、なんとバカなことをしてしまったのだろう!もちろん、腐敗した部分、官僚支配の色々な弊害はあっただろうが、一つずつ解決していけばよかった。
家のリフォーム、全体が古くなったら、全部壊してやり直すほうが簡単だが、価値ある歴史的文化財ならば保存しつつ修繕して使っていくのが正しいのに。
結局アメリカが爆弾を落として日本の建物(社会制度)を破壊し、アメリカの建物(社会制度)を建てたということ、戦争と同じだったのかもしれない。
しかし、今年はアメリカ大転換の時、どうなっていくのか、弱体化したアメリカは今後、
イラク戦争を停止し、イスラム社会から撤退し、世界の軍事基地から撤退、日本の基地も無くなって、植民地的な状態から脱することが望みである。テロなんてアメリカがいなけりゃないんだから。
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2008年9月リーマンショックの金融危機から日本の政治経済に目覚めた普通の主婦です。今までB層とバカにされていたと気がつきました。

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