「ルポ 貧困大国アメリカ」を読みました。

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
(2008/01)
堤 未果

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読むのがつらい話だった。
アメリカの社会はここまでひどくなっていたのか、と驚いた。
弱い立場の若者にしわよせがきていることがよくわかるレポートである。
自由競争の原理の行き過ぎを警告し、我が国も同じようにならないように!と思う。

1950年~60年代にかけて、テレビドラマなどで流行ったアメリカの中流家庭のイメージは日本人のあこがれだった。私達にとってアメリカのイメージそのものだったこの家庭は今はすっかり変わってしまったそうだ。

レーガン大統領時代から大きく市場主義、効率主義を基盤にした政策を打ち出した。
目的は大企業の競争力を高めることで、経済を上向かせること、そのために企業に対する規制を撤廃し、緩和し、法人税を下げ、労働者側に厳しい政策を許し、社会保障を削減。

安価な労働力に負けた国内の製造業などの労働者は失業者になり、中間層は脱落し、サービス業は一部のエリート層で事足りる性質だったので、エリート層と失業者の大きな格差のある社会になってしまった。

貧困児童はみな安いジャンクフードしか食べられないので肥満になっている。
アメリカの貧困の定義は、4人家族で年収が2万ドル(220万円)以下の世帯を指すそうで、その家庭の子供が貧困児童。国から配給される食糧交換クーポン、フードスタンプに頼る生活。
とくに「マカロニ&チーズ」は安くて人気が高いらしいが、健康に気づかうことは無理で、ファーストフードチェーンと学校が契約するなどしている。
フードスタンプに頼るのはその親、大人たちもそうだという。
家に調理器具、キッチンもない家も多く、安くて調理器具、調味料のいらないもの、おなか一杯になるものを探すのでジャンクフードになってしまう。

ハリケーン・カトリーナで1000人もの死者が出た被害があったが、あれは人災だという。
救援活動する機関までがほとんど民営化していたので対応に遅れが出てしまい、迅速に出来なかった結果だった。人命救助さえもいかに安く効率よく儲けるかというしくみに入っているのは恐ろしい。

公的医療も縮小され、保険外診療を増やしていった。自己負担が増え、支払いに困るようになって、民間の保健医療に入る人が増えていく。病院も長い入院をさせない。ものすごく高い入院費になっている。病院間の自由競争も激しくなるので、人員削減の際、看護師が切り捨てられ、残った人員は過酷な労働になっていく。よって医療ミスも増えている。乳幼児死亡率が先進国中一位だそうだ。

教育の現場も競争原理で「落ちこぼれゼロ法」2002年ブッシュ大統領は高校生に学力一斉テストを義務化したが、成績の悪い学校には助成金カットや、教師への処分が下されるようになった。
実はこの目的は生徒の個人情報を手に入れることだったようだ。
個人の情報を軍に提出するようにと決められていて、拒否すると学校への助成金カットするという。
だから貧しい学校は拒否できずに生徒の個人情報を軍に提出してしまう。
軍のリクルーターが直接勧誘するシステムが作られてしまった。
軍に勧誘する条件は大学の学費を負担し、職業訓練も受けられ、兵士用医療保険にも入れると甘い誘いだ。
自由に除隊もできるし、戦地に行かなくてもいい拒否権もあるというので、貧しい家庭の子供は勧誘されてしまう。

その勧誘リクルーターも貧しい若者で、前線に送られたくない人はこの職につく。しかしノルマ達成できなければ前線に戻されるという競争原理があるというから、必死になるが、結局どちらもかわいそうだ。
入隊を促すシステムは他にも色々あるが、兵隊になるのは最下層のマイノリティの若者がほとんどだという。

高校だけでなく大学生も狙われている。学費ローンや学費など返済をしてくれるという勧誘だ。学費が高騰しているのだ。ブラックリストに載ると就職もできなくなる。
軍に入れば借金から抜けられる。

生きていくために、兵役につくか、ホームレスになるかと選択をせまられれば、兵隊に行くしかないだろう。生きていくうえで自由に将来を夢見ることはできないまま最低ラインで生きていくだけになってしまう。

さらに人気のオンラインゲームがあって、「アメリカズ・アーミー」といって、無料でできるうえ、最高レベルのゲームらしく若者に人気があるそうだが、やるうち、戦いをしたくなるようにできているというのでこれも軍へ呼び込む戦略だろう。

軍に入っても結局天引きも多くて手元に残るお金は少なくずっと貧しいままだと言う。
帰還後は何のケアも受けられないのが8割で、心の病を患う人も多く、就職できず、
ホームレスになる人も多いという。

弱いものを食い物にする貧困ビジネスがある。国家レベルで行われるのが、「戦争」だ。
ラムズフェルド元国防省長官は戦争そのものを民営化できないか?と考えたと言う。

ある人は派遣というビジネスとして仕事を勧誘され、イラクに行き、トラック運転手をした。劣化ウラン弾の放射能に汚染された水しか飲めず、体調不良で帰ってきたら、白血病にかかっていて、医療費がかかり、彼は行く前よりもさらに貧困になったという。
さらに、アメリカ国内だけでなく世界中にこの派遣勧誘が広がっているという。戦争で潤う民間戦争請負会社があるのだという。日本人も例外でなく実際にインタビューされている。
なんでもかんでも民間になってしまうとこんなことになるのか、と思い知らされる辛い話だった。
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2008年9月リーマンショックの金融危機から日本の政治経済に目覚めた普通の主婦です。今までB層とバカにされていたと気がつきました。

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